葉月の一品
しかし夏真っ盛りの8月には多くの野菜が夏野菜として旬をむかえます。
今月のひとしなはトウモロコシのかき揚げでございます。
パリッとした歯ごたえにトウモロコシの香ばしさが合わさり、お子様にも好評な一品となっております。
一見シンプルなものではございますが、実はひと手間かかったこのかき揚げ、
トウモロコシの粒がバラバラになることなく形を整えて揚げるには技術が必要です。
秘密はトウモロコシのでんぷんから生成されるコーンスターチをつなぎに使用すること。
彩りとして水前寺海苔を合わせ揚げております。
大人の皆様にはビールのお供にも最適な夏のひとしなご賞味くださいませ。
京都の7月、祇園祭の定番
本来、秋に脂が乗る鱧ですが、
京都では暑さの厳しくなる夏にあっさりと食すことのできる脂の乗る前の鱧が古くから重宝されてきました。
特に祇園祭の7月には鰻同様、長いものを食べると精力がつくとされ、
鰻とともに鱧を食べる風習が根付いてまいりました。
鱧は小骨が多いことで有名な魚でございます。
京都ではその小骨を刃物で皮や身をつぶしてしまうことなく細かく刻んで下ごしらえする高度な調理技術が発達し、そのため様々な鱧料理が出来てまいりました。
当館では、鱧の中でも大振りの物を使用し、表面がかりっと且つ食べ応えのあるボリュームでご用意いたします。
夏の京都にお越しになられましたら是非賞味していただきたい一品でございます。
六月のひとしな
まもなく梅雨の季節が始まります。
梅雨は秋の収穫に向けての豊穣の雨でもあり、
私たち日本人はその梅雨すら季節の彩りに取り入れてまいりました。
今月の一品は「紫陽花饅頭」。
京都産のえんどう豆を使い山芋と合わせ、貝柱、椎茸、百合根を包み込みます。
紫陽花に見立てた京生麩で表面を飾りつけ色鮮やかに仕上げます。
旧暦の6月は水無月ともいい、田植えも終わり水田に水を張り「天」に水無しとの謂れからきています。
そして紫陽花は日当たりが苦手な花であり古くは青系色の小さな花が集まっている様を表して真藍を集めると書いて「あづさい」と呼ばれていました。
そこでこの一品のための器には蓋ものを選び、召し上がっていただくとき蓋を取る行為を日陰に咲いた青い花がほんの晴れ間の日差しに日の光に輝く様をも見立てた一品にしております。
2月は温まるひとしなです
2月は旧暦では新年にあたります。
また年間を通して最も京都の街は冷え込む月でもあり、
そういった風土で育った京料理は体を芯から温める料理が並びます。
そこで、2月の一品は粕汁をご用意いたしました。
京の地酒、それも新年に因み新酒から出た酒粕を用い、
鰤の骨、鮭の粗からスープをとり、
近江大根、金時人参、お揚を使い温まる一品でござます。
酒粕には酵母菌など酒が生成される工程で多くの菌が米の発酵に働きかけます。
こういった酵母菌は、ヨーグルトなのど乳酸菌と同様に私たちの体内でも大いに活躍してくれます。
体内の毒素を酵素の力で消したり、酸の力で体を温める効果を発揮したり、
冬の寒さを乗り越える医食同源の食材でもあります。
その酒粕をミキサーでペースト状にした上で更に何度も漉して出汁とあわせ、
旨みの凝縮する冬野菜を京料理ならではの一手間で、
大根で鮭を巻き込み盛り付け、
体を温める効果のある香味野菜であります青葱と一味を乗せて、
ご用意いたします。