12月は焼き物です。
今年もあと残すところ一ヶ月となりました。
今年一年を振りかえっていますと、もう来年のことを考えなければならない。今月はそんな月です。
これを矢羽の絵を用いりまして、光陰矢の如しと表現いたしました。
そして新年のお飾りでございます餅花に見立てた海老などを通しました竹串と、
鯧(まながつお)の西京漬けを扇面に盛り付けました。
京都の西京味噌にまながつおを三日間漬けこみ、それを焼きましたものに、
12月ですか料理では季節を早取りしまして新年の意匠をあしらった盛り付けをし、
本年を振り返りつつ新しい年を想う。という気持ちを込めたひと品でございます。
秋刀魚が油が乗り美味しくなりました。
その旨みを残し、長芋・梅肉を包み油で揚げ、特製の出汁に漬けて、
秋刀魚の姿になるように頭と尾びれを飾りつけ、
芋と人参の落ち葉の飾り細工で散らし吹き寄せに見立てて盛り付けています。
秋の彩りに盛られた濃厚な秋刀魚の風味と梅の酸味、長芋の歯ごたえを味わってくださいませ。
10月の一品は秋を代表する味覚であります松茸の土瓶蒸し。
松茸は秋の京料理には必ず一品以上の松茸をあしらった料理が出されます。
その中でも土瓶蒸しは松茸の香りと風味をもっとも引き出す料理の一つです。
9月の一品は賀茂茄子の揚げ出汁です。
京野菜の代表的な野菜「賀茂茄子」。
茄子といえば夏野菜ですが、賀茂茄子は秋に近づけば近づくほど美味しくなります。
肉厚のある茄子をどうぞ召し上がってください。
祇園祭が過ぎますと鱧は名残り鱧と呼ばれるようになります。
夏のこの時期少しづつ鱧も油がのりだし風味も美味しくなります。(夏に鱧を食すのはあっさりとした身が暑さに食少気味の体に合う為で旨みは夏も過ぎた頃の方が美味しくなります)
その名残り鱧を使用し、鱧でそうめんを包み吸い物にしました。
その上にあしらわれていますのは冬瓜です。
冬瓜は夏野菜の一つですが、これは漢字を音読みしますと「とうが」となり、
その昔冷蔵庫もなかった時代には冬瓜の丸のまま冷暗所に置いておけば、
冬まで保存できるとされたことから冬瓜と呼ばれるようになりました。
今月のひとしなは鮎の塩焼きでございます。
和泉屋旅館では鮎は小鮎を使います。
大きい通常の鮎では骨を除けながら召し上がりますが、
さくさくっと骨まで丸ごと食べていただきいので、
小鮎を塩焼きにしてそれに蓼酢を添えてお出しいたします。
あしらいは京野菜の伏見青唐をじゃこと炊き合わせたもの。
三種類の鮎が住む琵琶湖で獲れたものを使い、その中でも夏中は動物性プランクトンのみを食べ春以降はほとんど成長しない小鮎を使用します。
今月は水無月豆腐です。
水無月は無病息災を祈願する袖事で用いられる
京都の6月の代表的な和菓子です。
これを京料理に転用したのが水無月豆腐です。
長芋を細かく切り、
味を調え、
吉野葛で固め、
最後に小豆を散らし氷室の氷を表現した一品です。
切子ガラスの器に盛り付けられた様子は、
梅雨の季節に清涼感を呼び込んでくれます。
今月は焼物で油目の皐月焼きです。
関西では油目(あぶらめ)と呼んでいますが、標準和名はあいなめです。漢字にすると“鮎並”、“鮎魚女”と書くようです(鮎のように縄張りを持つ魚・・・だとか?)。
鮎魚女の上身をトマトと共に焼き、この季節に濃いピンク色の花を咲かす皐月に見立てています。
至ってシンプルに仕上げその素材を味わっていただくあっさりとした焼物です。
そして付け合せには一寸豆に見立てたうぐいす豆をあしらいます。
緑身の強いうぐいす豆を裏ごしし練り合わせたものを一寸豆に見立てたひと手間入れた付け合せです。
今月は焚き合せです。
京都では春の訪れと共に、京都洛西の塚原産の筍も甘みを増し中身がぎゅっと詰まり若竹が美味しい季節になります。
また、明石の桜鯛の子も生姜の香りと共に焚き合げ、
桜麩と木の芽を添えた瑞々しい春の一品です。
若竹の歯ごたえと香りを存分に堪能ください。
今月は春の前菜です。
飯蛸も美味しい時期になり素材を生かしお酒がすすむ一品に料理いたしました。
中段は貝合わせを模した器を開けると春らしい取合せの菜の花と若布、白魚の黄味酢和えが覗きます。
下段には春の香りがする桜寿司、細やかな細工が映える蕨に見立てた烏賊蕨。
そして花見をイメージした花見団子が傾けられ、
桜花の飾りと古布の飾り掛けも華やかに古都の春を祝う前菜でございます。